ラーメンは学生時代からずっと好きでした。当時はSNSみたいなものもまったくありませんでしたから、本屋さんで“ラーメン本”を買って、食べ歩きを楽しんでいました。社会人になって、僕はサーフィンにハマりながら建築の仕事をはじめるんですが、ずっとラーメン屋さんに“憧れ”を持っていました。ラーメン屋さんって、お客様の「美味しかった」という声や笑顔といったリアクションがダイレクトに返ってくるじゃないですか。そこが凄く良いなって思って、自分も真剣にラーメンの仕事をやってみたいと思うようになったんです。そこからはもう、頭丸めて、東京で一番厳しいところに修行に行って、4年半くらいがむしゃらに働きましたね。
独立を決めて、自分で創るラーメンに“蛤(ハマグリ)”を選んだのは、僕自身が“蛤”が大好きだったからです(笑)。それと、当時(2006年)はまだ“蛤のラーメン”で勝負している人が誰もいなかったからというのもあります。限定で提供されていたお店はあったのかもしれませんが、勝負しているお店はなかったと思います。自分でやるからには、オンリーワンへのこだわりは絶対に譲れなかったので、大変なことになるのはわかっていましたけど、選んじゃいましたね“蛤”を。そして予想通りとても大変な目にあいました(笑)
「これはラーメンじゃない」って言われたことも何度もありました。僕は認めてもらえるのに凄く時間がかかりました。12年くらいはお店に寝泊まりしながら、一つ一つの食材、素材と向き合う時間を過ごしましたし、でも・・・、今思えば僕はそういう創り方しかできなかったんですよね。僕の持ち味は努力と根性しかないんで、自分を追い込んで追い込んでそこから出てくる“何か”で味を創り上げるしかないんです。そうじゃないと楽しくないんですよね。今回の花月嵐さんとのコラボも本当に楽しくて、凄く刺激になりました。これからも世界中のたくさんの人にラーメンの魅力を届けて行きたいと思います。
『真鯛と蛤の塩そば 金色不如帰』本編